ITパスポートとは、情報処理技術者試験の一区分として実施されている国家試験です。セキュリティやネットワークなどのIT基礎に加え、経営戦略、財務、法務、プロジェクトマネジメントなど、ITを利活用する社会人およびこれから社会人となる学生が備えるべき総合的知識を問う試験区分です。
試験はCBT(Computer Based Testing)方式で通年実施されています。試験会場は全国47都道府県に設置されており、受験者は希望日時・会場を選択して申し込む方式です。
令和7年3月度実施分において、年間応募者数は309,068人となり、試験開始以来初めて30万人を突破しました。応募者構成を見ると、令和6年度の勤務先別区分では、非IT系企業からの応募が最も多い結果となっています。非IT系企業の中では「金融・保険業、不動産業」の応募者数が突出しています。また、「電気・ガス・熱供給・水道業」は前年度比66.6%増となり、この2年間で約3倍近く応募者数が増加しました。
そのほか、「建設業」「製造業」でも直近2年間で応募者数が急増しています。業務別では「営業・販売(非IT関連)」が最も多い結果です。加えて「研究・開発」「製造」は2年連続で前年度比二桁以上の増加率となっています。
学生区分では、大学生・高校生ともに応募者が増加しています。内訳では「大学(情報系以外の文系)」および「高校(普通系・その他)」が、2年連続で前年度比二桁以上の増加率となっています。
これらの公式データが示しているのは、ITパスポートがIT専門職のみを対象とする試験ではないという事実です。非IT系企業、営業・販売職、研究・開発職、文系学生、高校生まで広く受験している国家試験です。
本記事では、以下の内容を公式データに基づいて整理します。
- 合格率(年度別実数)
- 合格基準と採点方式
- 過去問と出題形式
- 難易度の実態(数値ベース)
- 試験概要(1表統合)
ITパスポートの位置づけ
ITパスポート試験は、前身資格からの制度的経緯を経て創設された区分ですが、国家試験としては比較的新しい部類に入ります。
情報処理技術者試験制度におけるスキルレベル1に位置付けられており、IT分野の入門的内容を広く体系的に扱う試験です。
一方で、インターネット上では「役に立たない」「必要性が低い」といった否定的な意見も見受けられます。そうした発信を確認すると、自身でサーバーやドメインを契約しWeb制作を行っている人や、フリーランスとして活動している人、いわゆるIT業界の実務者である場合も少なくありません。
実務の最前線で高度な技術を扱っている立場から見れば、スキルレベル1の知識水準が実践的ではないと感じるのは自然な側面もあります。
ただし、ITパスポートはあくまでスキルレベル1として設計された試験です。上位区分や実務スキルへの発展を前提とした基礎段階の資格であり、出発点としての位置付けに意味があります。
高度専門職を目指す人材の入口となる可能性もありますし、より身近な場面では、職場においてIT関連の基礎的な相談に対応できる存在になるという活用も現実的です。社内で「ITのことはこの人に聞こう」と言われる立場になることは十分想定できます。
また、行政機関においても職員へITパスポートの取得を推奨する動きが見られました。
就職・転職活動において合格者は、資格として履歴書に記載することができます。ITに関する基礎知識を体系的に学習し、国家試験に合格した事実は、一定のアピール材料となります。企業の人事担当者にとっても認知度のある国家試験区分であり、自己PRの一要素として活用可能です。
ITパスポート試験 試験概要
| 申込み と期間 | 通年随時受付(CBT方式)。 受験希望日の原則3日前まで 申込み可能(会場により異なる)。 |
| 試験日 | 通年実施 (会場の空席状況に応じて日時選択制) |
| 試験地 | 全国47都道府県の試験会場 |
| 受験資格 | 制限なし (年齢・学歴・実務経験不問) |
| 出題形式 と時間 科目構成 と内容 | CBT方式/四肢択一式 100問/試験時間120分 出題分野: ストラテジ系・マネジメント系・ テクノロジ系 |
| 合格基準 | 総合評価点600点以上 (1000点満点)かつ 分野別評価点それぞれ300点以上 |
| 免除科目 と条件 | 免除制度なし |
| 受験料 | 7,500円(税込) |
| 合格発表 | 試験終了後、即時に画面表示。 正式な合格発表は原則として 試験実施月の翌月中旬に マイページで公表 |
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| 主催者 | 独立行政法人情報処理推進機構(IPA) https://www.ipa.go.jp/shiken/ kubun/ip.html ITパスポート専用ページ https://www3.jitec.ipa.go.jp/ JitesCbt/index.html |
合格率と難易度
平成29年度(2017~2018年)から令和6年度(2024~2025年)の期間、ITパスポートの合格率は49.1%から58.8%であり、想定される試験の難易度は偏差値表示で45です。
| 年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 令和6年度 2024~2025年 | 273,905 | 134,617 | 49.1% |
| 令和5年度 2023~2024年 | 265,040 | 133,292 | 50.3% |
| 令和4年度 2022~2023年 | 231,526 | 119,495 | 51.6% |
| 令和3年度 2021~2022年 | 211,145 | 111,241 | 52.7% |
| 令和2年度 2020~2021年 | 131,788 | 77,512 | 58.8% |
| 平成31/令和元年度 2019~2020年 | 103,812 | 56,323 | 54.3% |
| 平成30年度 2018~2019年 | 95,187 | 49,221 | 51.7% |
| 平成29年度 2017~2018年 | 84,235 | 42,432 | 50.4% |
1.合格率から見る難易度
直近年度の合格率は概ね50%前後で推移しています。
国家試験としては、極端に低い水準ではありません。
ただし、受験者には
- IT実務経験者
- 企業研修受験者
- 学校単位での団体受験
- 未経験の初学者
が混在しています。
そのため、受験母集団が均一ではない試験という前提で合格率を解釈する必要があります。
2.スキルレベル上の位置付け
ITパスポートは、情報処理技術者試験制度におけるスキルレベル1に位置付けられています。
これは
- 高度専門職向け試験ではない
- 実装技術を問う試験ではない
- 基礎的なITリテラシー確認試験
という設計思想を意味します。
難易度は「専門技術試験」ではなく、「基礎知識の体系理解試験」と捉えるのが適切です。
3.IRT方式による評価構造
本試験はIRT(項目応答理論)で評価されます。
そのため、
- 正答率だけでは評価点が決まらない
- 難問を正解すると評価が高く出る
- 易問を多く落とすと評価が伸びにくい
という特徴があります。
単純な「60%取れば合格」という試験ではありません。
4.分野バランス型試験
合格条件は
- 総合評価600点以上
- かつ3分野すべて300点以上
です。
1分野に偏った得点では合格できません。
テクノロジ系だけ高得点でも、ストラテジ系が不足すれば不合格になります。
この構造が、実質的な難易度を一定水準に保っています。
5.受験者タイプ別の体感難易度
| 受験者タイプ | 体感難易度 |
|---|---|
| IT実務経験者 | 低め |
| 情報系学習経験者 | 標準 |
| 完全未経験者 | やや高め |
専門的なプログラミング技能は不要ですが、
用語数が多いため未経験者は「暗記量の多さ」を難しく感じやすい試験です。
難易度|ITパスポートは
ITパスポートは「高度専門試験」ではありません。
しかし、分野横断型・IRT評価・足切り構造という設計により、基礎を網羅的に理解していなければ合格できない試験です。
難易度は想定される試験の難易度は偏差値表示で45と前記しましたが
- 国家試験としては中程度
- IT未経験者にとっては基礎固めが必要
- 経験者にとっては確認レベル
という位置付けで整理できます。
合格率だけで「簡単」と判断できる試験ではありません。
合格基準・出題範囲・試験構成|ITパスポート試験
1.合格基準・合格点|ITパスポート
| 総合評価点 | 1,000点満点中600点以上 |
| 分野別評価点 | 各1,000点満点中300点以上 (全分野必須) |
| 不合格条件 | 総合評価点600点以上でも、 いずれかの分野別評価点が 300点未満の場合は不合格 |
2.出題範囲(分野構成)|ITパスポート
| ストラテジ系 | 01 企業と法務 02 経営戦略 03 システム戦略 |
| マネジメント系 | 04 開発技術 05 プロジェクトマネジメント 06 サービスマネジメント |
| テクノロジ系 | 07 基礎理論 08 コンピュータシステム 09 ヒューマンインタフェース・ マルチメディア 10 データベース 11 ネットワーク 12 セキュリティ (情報セキュリティ全般) 13 セキュリティ (情報セキュリティ管理) 14 セキュリティ (情報セキュリティ対策・ 実装技術) |
3.試験形式・出題数・評価対象|ITパスポート
| 試験形式 | 四肢択一式・小問100問/ CBT方式 (コンピュータ画面上で解答) |
| 試験時間 | 120分 |
| 出題内訳 (目安) | ストラテジ系35問程度/ マネジメント系20問程度/ テクノロジ系45問程度 |
| 総出題数 | 100問 |
| 評価対象 問題数 | 総合評価:92問 分野別評価: ストラテジ系32問/ マネジメント系18問/ テクノロジ系42問 |
| 評価対象外 問題数 | 8問(今後出題する問題の評価用) |
| 配点方式 | IRT (Item Response Theory: 項目応答理論)に基づき評価点を算出) |
合格点の評価構造
ITパスポート試験の評価は素点合計方式ではありませんので、各分野300点 × 3分野 = 900点という計算にはなりません。
評価構造
- 総合評価点:1,000点満点中600点以上
- 分野別評価点:各1,000点満点中300点以上(3分野すべて)
重要な点は、分野別評価点もそれぞれ1,000点満点として独立して算出されることです。
3分野を合算して900点になるという構造ではありません。
また、採点はIRT(項目応答理論)に基づいて評価点が算出されます。
そのため、
- 「1問=○点」という固定配点ではない
- 問題数(35問・20問・45問)と評価点(1,000点満点)は比例関係ではない
という仕組みです。
結論
合格条件は
総合評価点600点以上
かつ
ストラテジ系・マネジメント系・テクノロジ系の各分野で300点以上
であり、「300点 × 3分野 = 900点」という合格基準ではありません。
勉強時間|ITパスポート
Tパスポート合格までに必要な学習時間は、目安として100時間~180時間程度です。
IT分野が未経験の場合は約180時間(およそ3か月)が一つの基準となります。一定の情報系知識がある場合は、100時間未満で到達するケースもあります。学習ペースとしては、1日1.5~2時間を約3か月継続する形が標準的です。
学習時間の目安(ケース別)
- 未経験・初学者:150~180時間(3~4か月)
- 基礎知識あり・経験者:60~100時間(1~1.5か月)
勉強方法
学習の進め方(過去問反復型)
ITパスポートは出題範囲が明確であり、四肢択一式です。
学習の中心は過去問の反復に置く構成が効率的です。
1.初期段階:過去問で全体像を把握
- まず過去問を1回分通して解く
- 正答率は気にせず、出題分野と用語を確認する
- 解説を読み込み、知らない用語を整理する
最初から参考書を精読するのではなく、出題形式に触れてから理解を進めます。
2.中期段階:分野別に反復
- ストラテジ系
- マネジメント系
- テクノロジ系
分野ごとに問題演習を繰り返します。
誤答問題は必ず再解答し、正解できるまで反復します。
ポイントは「解説理解 → 再解答 → 定着確認」の循環です。
3.後期段階:年度横断で演習
- 5年分以上を目安に繰り返す
- 分野をまたいだ横断理解を確認する
- 用語の定義を曖昧にしない
IRT方式のため単純な暗記だけでは安定しません。
概念理解を伴う反復が必要です。
4.スキマ時間の活用
- アプリや問題集で小問演習
- 用語確認中心の短時間学習
- 間違えた問題のみ再確認
短時間でも「過去問ベース」で回します。
5.学習構造の要点
- インプット中心ではなく、演習中心
- 間違えた問題を潰す作業が得点安定に直結
- 3分野を均等に回す
ITパスポートは出題構造が安定しているため、
過去問の反復を軸にすれば独学でも合格水準に到達可能です。

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過去問について
ITパスポート試験では、過去問題が公開されています。
公開問題は実際に出題された問題で構成されており、分野別に確認できます。
CBT方式のため、同一問題がそのまま繰り返し出題される形式ではありませんが、出題範囲および設問形式の把握には過去問題の活用が有効です。
過去問では以下を確認できます。
- 分野ごとの出題傾向
- 設問文の長さと難易度
- 用語理解の深さ
- 計算問題の比率
試験は知識確認型の四肢択一ですが、単純暗記のみでは対応できない設問も含まれます。用語理解と基本概念の整理が前提となります。
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